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従業員が定着しない原因──辞めた理由の最大分類は「その他」

ふくきた|意思決定ドック 主宰
著者ふくきた意思決定ドック 主宰

求人にも研修にも投資している。それでも、採用してもしばらくすると辞めてしまう。

そのような状況に陥ってはいませんか?

対策を立てるには、まず辞めた理由を知る必要があります。

ところが、その理由こそが経営者からは最も見えづらいところにあります。

この記事では、従業員が定着しない原因を整理し、どのように対策を立てるべきかを解説していきます。

退職理由の大半は会社都合ではない

厚生労働省の令和6年雇用動向調査から見ていきます。約15,000事業所を対象にした調査です。

令和6年の離職率は14.2%でした。前年より1.2ポイント下がっています。

注目したいのは、その内訳です。

個人的理由による離職が10.7%、事業所側の理由による離職が0.8%。大半が会社都合ではなく、本人が辞めると決めています。

大切なのは、辞める理由を把握することです。

辞める最大の理由は「その他」

同じ調査で、転職した人が前職を辞めた理由を見ると、妙なことが起きています。

男性の最多は「その他の個人的理由」で20.2%。女性も同じく「その他の個人的理由」で24.3%です。

辞めた理由の最大の塊が「その他」になっている。

この「その他」に類する分類を除くと、順位はこうなります。

男性は「定年・契約期間の満了」14.1%、次いで「給料等収入が少なかった」10.1%。

女性は「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」12.8%、次いで「職場の人間関係が好ましくなかった」11.7%。

国が全国規模で調べても、最も大きい分類は中身が分からないままです。

自社の退職面談で、これより精度の高い理由が取れていると考えるのは、やや楽観的かもしれません。

辞める原因は入口から出口まで散らばっている

退職する原因はひとつではありません。

いろいろな原因が重なっているケースが多くあります。

採用の時点でズレている

まず、採用の時点でとるべき人材を誤っている。このパターンが驚くほど多いのが実情です。

原因のひとつは、面接の印象で採否を決めていることです。感じがいい、受け答えがうまい、うちに合いそう。採用フローが固まっていない会社ほど、印象が主役になりがちです。

印象で選ぶと、選考は面接に強い人が通る場になります。高い専門性を持っていても受け答えが不器用なら落とされる。その逆も起こります。

目的や会社の風土・文化によって採用するべき人材は違います。能力が高くても、会社の目的や風土・文化に合わない人を採用してしまうと、思うようなパフォーマンスは出せません。

採用は、高いコストが発生する投資です。

それなのに、採用基準を明確にせず「いけるでしょ」と感覚重視で決めた採用は、入社後にズレが出やすくなります。

詳しくは採用のミスマッチが起きる原因に書いていますので参考にしてください。

配置が噛み合っていない

人を増やしても成果が伸びないときは、適材適所が機能していない可能性があります。

基本、人の長所・短所というものは凸凹しているので、不得意なことを任せてしまうと、思うようなパフォーマンスが出せないものです。

事務が得意な人に、営業をやらせる。逆に営業が得意な人に、工場で部品の組み立てをやらせるなど。適性と離れた業務を任せると、成果を出しづらくなります。

しかし、多くの企業では「適材適所」を考えて人材を配置できているとは言い難い状況になっています。

できていない理由は3つあります。

入ったばかりの人の適性を見抜くのは、そもそも難しいこと。見極める必要を感じないまま、流れ作業で配置していること。そして、上の都合による人員調整です。

こうして、力を発揮しづらい場所に置かれたまま動かない、いわば塩漬けの状態が生まれます。

また、同じ配置でも任せ方しだいで従業員の納得は変わります。

人材育成の仕組みが整っていない

育てる気がないのではなく、育てる余裕がない会社が大半です。

人材育成を専門に担う人は、中小企業にはまず置けません。実際に担うのは中間管理職です。

ところがその管理職は、自分も現場に出ながら人を見るプレイングマネージャーで、上からの指示と下からの要望に挟まれています。精神的にも時間的にも、人を育てる余白が残っていません。

育成に使える時間がどこにも残っていない構造は、別の記事で扱いました。

人材育成の問題点として最も多いのは「指導する人材が不足している」です。

管理職が育たない構造から見直す必要があります。

成長の道筋が見えない

人が同じ場所に留まるのは、ここにいれば何かが積み上がると思えるからです。キャリア、収入、できることの範囲。どれかが右肩上がりになるイメージを持てるあいだ、人は動きません。

逆に「この会社にいて大丈夫か」という不安が濃くなるほど、その場所には居られなくなります。

何も分からない場所に放り出されて、やれとだけ言われる。それで進めるのは、ごく一部のセンスのある人だけです。多くの人は、やり方と手順が見えないと途中で挫折します。

ここで続ければこう変わっていく、という道筋を会社の側が示せているか。教育の体制とあわせて、ここが定着の分かれ目になります。

成長意欲が低いように見えるとき、原因は道筋の示し方にあるかもしれません。

辞める前に本音が上がってこない

退職のとき、本音はまず語られません。言ってもどうにもならないと思っているからです。

理解してもらえない。波風を立てたくない。世話になった会社と、円満に終わりたい。

だから表向きの理由は「別のことに挑戦したい」「家庭の事情で」になります。本当は将来が見えない、給料への不満、方針への疑問だったとしても、口にせずに静かに去っていくのです。

経営側にとって、これは単なる情報不足では済みません。本当の理由が分からなければ、改善の手が打てない。手が打てなければ同じ状況が続き、また同じ理由で人が辞めていきます。

定着しない状態が続くのは、この循環が回っているからです。

退職理由の建前と本音がどこで入れ替わるのかは社員が辞める本当の理由にまとめました。

「強くなれ」と「支えてほしい」はすれ違っている

もうひとつ、見落とされやすい原因があります。

経営者が求めているものと、現場が求めているものが、逆を向いていることです。

リンケージが2022年に行った調査があります。経営者159名と会社員161名への調査です。

経営者が従業員に高いストレス耐性を求めていると答えたのは65.3%でした。

一方、従業員が「求められている」と感じているのは47.5%。16.8ポイントの差があります。

規模の小さい調査なので、数字そのものより差の向きを見てください。

経営者は「強くなってほしい」と考えます。しかし現場が欲しいのは、耐性ではなく支援です。

足りないのが人手なら人を出す。予算が要るならつける。関係がこじれているなら仲介に入る。

求めているものが違えば、どれだけ手を打っても届きません。

支援を求める側に何が見えているのかは、現場の立場からエッセイに書いています。

見込みのない仕事を回し続けさせない

支援には、もうひとつ側面があります。

成果の出ない事業や案件を畳まないまま、現場に回させ続けることです。

アビームコンサルティングが2018年に大手企業を対象に行った調査があります。

そこでは、新規事業のうち累積損失を解消できたのは7%でした。

大半は回収に至りません。だから、どこかで畳む判断が要ります。

しかし撤退は「失敗」という評価になるため、担当者のメンツが判断を遅らせます。

そのあいだも人員だけは削られ、一人あたりの負荷は増えていきます。

疲弊した現場から、人は静かに抜けていきます。

撤退すべきだと分かっていても動けなくなる仕組みは、現状維持バイアスとして書きました。

やめる条件を先に文章にしておく方法は、事業撤退の基準の決め方として別の記事で解説しています。

どこから手をつけるか

  1. 1

    辞めた理由を「その他」で終わらせない

    国の統計でさえ最大分類が「その他」です。自社の記録も同じ状態になっていないか確かめる。分類を細かくするだけでも見え方は変わります。

  2. 2

    評価を握らない相手が聞く場を用意する

    直属の上司には言えないことがあります。別ルートを一本通すだけで、辞める前に上がってくる情報が増えます。

  3. 3

    支援と耐性のどちらを求めているか確かめる

    現場が求めているのは人手や予算や仲介です。精神論で返している限り、施策は空振りし続けます。

  4. 4

    畳む判断を先送りしない

    見込みのない仕事を回させ続けることは、負荷を増やすだけでなく、働く意味そのものを奪います。撤退ラインは始める前に決めておく。

まとめ:定着は採用の続きではない

  1. 1

    離職の大半は本人の意思

    令和6年の離職率は14.2%。うち個人的理由が10.7%、事業所側の理由は0.8%。会社が減らしているのではない。

  2. 2

    辞めた理由の最大分類は「その他」

    男性20.2%、女性24.3%。国の統計でも中身が分からない。自社の退職面談はそれ以上に粗い可能性がある。

  3. 3

    原因は入口から出口まで散らばっている

    採用、配置、育成、道筋、上司との関係、本音の通り道。どれか一つを直しても止まらない。

  4. 4

    求めているものがそもそも違う

    経営者は耐性を求め、現場は支援を求めている。ここがずれたままでは、施策は届かない。

定着は、採用の延長線上にあるものではありません。

会社で過ごす毎日に「苦」や「不安」が大きいと、従業員が離職するリスクは高くなります。

そして、その毎日を形づくっているのは、経営者が下してきた判断の積み重ねです。

人が辞めるたびに施策を足す前に、どの判断がこの結果を招いたのかを見る。

そこからしか、止め方は見つかりません。

ただ、自分が下した判断を自分で棚卸しするのは、思っている以上に難しいものです。

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この記事を書いた人

ふくきた|意思決定ドック 主宰

ふくきた意思決定ドック 主宰

会社員として組織の内側を見ながら、副業でクライアントワークを続けています。マルチ商法での信用失墜、投資詐欺による数千万円の損失、借金、事業の失敗。人一倍の失敗を重ねるなかで、判断を誤る構造を身をもって学んできました。その経験から、経営者の意思決定に伴走する「意思決定ドック」を立ち上げています。

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