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意思決定の質

配置を変えるとやる気が下がるのはなぜか──伝え方で納得は変わる

ふくきた|意思決定ドック 主宰
著者ふくきた意思決定ドック 主宰

成長してほしいと思って、従業員を配置転換して新しい仕事を任せた。

ところが当の本人からやる気が感じられない。どうもモチベーションが低いように見える。期待をして仕事を任せたのに、なぜだろう…

このように感じたことはありませんか?

経営者であれば、従業員の配置転換や仕事の任せ方に悩んだ経験が一度はあると思います。

同じ人物に同じ仕事を任せるとしても、任せ方によって結果は大きく変わります。

この記事では、配置転換をして新しい仕事を任せる際の「伝え方」と「任せ方」について解説していきます。

配置転換によって従業員のモチベーションが下がってしまうと感じているなら、ぜひ参考にしてください。

8割超が上司との認識のズレを感じている

まず、部下側の実感を数字で確認してみます。

PHONE APPLIが2025年に、定期的に上司と面談をしている一般社員110名に行った調査があります。

上司との認識のズレを感じると答えたのは84.6%でした。

定期的に話す機会があってもなお、8割を超える部下がズレを感じているということです。

ズレを感じる場面の1位(58.1%)
自分の強みや貢献が、上司に十分理解されていないと感じるときです。半数以上が該当しています。
同じく2位(47.3%)
自分が重要だと思っている課題と、上司の優先順位が異なるときです。何を優先すべきかの前提が共有されていません。

さらに、上司のフィードバックが「感覚頼み」だと感じている部下は81.9%にのぼります。

面談の回数を増やしても、この数字は動きません。ズレているのは頻度ではなく、中身のほうです。

なぜ「見てもらえていない」と感じるのか

上司の側に悪意はありません。それでもズレるのには、はっきりした理由があります。

判断の理由が本人に渡っていない

上司は、会社の方向性や経営層の意図といった情報を持っています。

その情報をもとに配置を決めますが、決めた理由まで本人に伝わることはまれです。

部下から見えるのは結果だけです。理由が分からなければ、思いつきで振られたようにしか見えません。

「会社の都合」と「あなたの成長」が混ざっている

実際の配置には、たいてい両方の要素があります。

人手が足りないという事情もあれば、経験させたいという意図もある。

問題は、それを「あなたの成長のため」とだけ伝えるときです。

会社側の事情を察している部下からは、きれいな言葉で包んだように受け取られます。

むしろ、都合の部分も正直に伝えたほうが信頼は残ります。

評価の根拠が感覚に寄っている

先の調査で8割超が「感覚頼み」と答えているのは、ここです。

「頑張っているね」「もう少しだね」では、何を見て言っているのかが伝わりません。

強みを理解していると示すには、具体的な事実を挙げる以外に方法がありません。

私自身も畑違いの部署に配置されています

私はいま会社員として、Web関連の業務を担当する前提で中途入社しました。

しかし配属されたのは商品開発の部署で、現在は開発業務の比重が上がっています。

会社側の事情は理解できます。方向性が変われば、必要な役割も変わります。

ただ、理解と納得は別のものでした。

積み上げてきた強みが活きない場所にいると、どうしても「見てもらえていない」という感覚が残ります。

これは能力や意欲の問題ではなく、伝わり方の問題だったと今は思います。

同じ配置でも伝え方で納得は変わる

ここがこの記事の中心です。配置を変えずに、納得だけを変えることはできます。

次の2つを比べてみてください。任せる仕事は同じです。

納得が生まれない伝え方
「これをやる人がいないから、やってほしい」。人員の穴埋めとしてしか見られていないと受け取られます。誰でもよかったことになってしまいます。
納得が生まれる伝え方
「あなたの強みはここだと思っている。そのうえで、これまでの仕事を見ていてこの分野も向いていると感じた。会社もこの力を求めているので、任せたい」

違いは、相手を見た形跡があるかどうかです。

後者には、強みの認識、観察した事実、会社側の必要性という3つが入っています。

この3つが揃うと、部下は「見たうえで選ばれた」と受け取れます。

納得を生む任せ方の3ステップ

実務に落とすと、次の3つになります。

  1. 1

    強みを言語化して本人に返す

    具体的な場面とともに、何が得意だと思っているかを言葉にします。ここを飛ばすと、以降は何を言っても取ってつけたように響いてしまいます。

  2. 2

    都合と期待を分けて伝える

    会社側の事情と、本人に期待していることを分けて話します。混ぜると、事情のほうを察されたときに、全部が建前になってしまいます。

  3. 3

    強みが活きる部分を残す

    全面的に畑違いへ移すのではなく、得意な領域を一部でも残します。ゼロにすると、積み上げを否定されたと受け取られます。

配置そのものをどう設計するかは、「なぜ組織の生産性は上がらないのか」で詳しく解説しています。

納得しないまま働く従業員は本音を話さなくなる

この問題を軽く見ないほうがいい理由があります。

納得できないまま働く部下は、上司を信頼しなくなります。

信頼のない相手に、人は本音を話しません。1on1は進捗報告の場に変わります。

そうなると、現場で起きていることが上に上がってこなくなります。

配置への不満が、情報の遮断に変わる。ここが本当の損失です。

部下が本音を話さなくなる構造は、「1on1で部下が本音を話さない理由」でも解説しています。

そして最終的に、見切りをつけるのは優秀な人からです。他で通用する力があるからです。

まとめ:見たうえで任せたと伝える

要点を整理します。

  1. 1

    ズレは頻度では埋まらない

    定期的に話していても84.6%がズレを感じ、その1位は強みを理解されていないことです。回数ではなく中身の問題です。

  2. 2

    配置は同じでも、伝え方で変わる

    強みの認識、観察した事実、会社側の必要性。この3つが揃うと、穴埋めではなく選ばれたことになります。

  3. 3

    納得の欠如は情報を止める

    信頼が失われた相手に本音は届きません。配置への不満が、現場の情報が止まることにつながっていきます。

部下が求めているのは、希望どおりの仕事とは限りません。

見たうえで決めてもらえた、という事実のほうです。

直近で誰かに新しい仕事を任せたとき、その人の強みを具体的な言葉で伝えたでしょうか。一度、思い返してみてください。

この記事を書いた人

ふくきた|意思決定ドック 主宰

ふくきた意思決定ドック 主宰

会社員として組織の内側を見ながら、副業でクライアントワークを続けています。マルチ商法での信用失墜、投資詐欺による数千万円の損失、借金、事業の失敗。人一倍の失敗を重ねるなかで、判断を誤る構造を身をもって学んできました。その経験から、経営者の意思決定に伴走する「意思決定ドック」を立ち上げています。

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